先日、「しいたけの旨煮」を作ろうと思い立ちました。そこで、健菜のどんこを水に浸した状態で冷蔵庫に。「1日このままにして、冷水でゆっくりと戻す」と決めています。
仕事に追われていた若い頃は、時短料理に関心がありました。「手早く、簡単」がキーワード。でも、セミリタイアした今は違います。
「時間がいい仕事をしてくれる」
そんな風に感じています。
干ししいたけの旨みをとことん引き出すのは、人間ではなくて「時間の技」。
特に、健菜の干ししいたけは見事なまでに肉厚で、ぬるま湯で戻すとか、電子レンジで温めるといった時短テクニックに向きません。それに、宮崎県椎葉村の深い森で、山人たちが栽培しているしいたけの、大切な旨みを損なうようで、もったいなくはありませんか。
そんなことを考えていたら、大学時代の友人から写真がメールで送られてきました。私が欠席した、彼女の家での食事会の様子です。とはいえ、写っているのは料理だけなのが、料理自慢の彼女らしいのですが...。
「わあ、茶色い!」
それが写真の第一印象。漬物や煮しめ、煮豆など、地味な色の料理が多いのです。若い頃は華やかな料理を並べていた彼女も、傾向が変わったのでしょう。一緒に歳をとり、リタイア後の生活を楽しんでいる彼女も時間の技を尊重しているのかもしれません。ちなみに目を凝らしたら、しいたけの旨煮もちゃんとありました。ちらし寿司に散っていた茶色のもの、そうですよね。
低温でゆっくりと戻したしいたけは、ふっくら堂々としています。それを、時間をかけて煮含めていきました。火を止めて、さらに煮汁を含ませて......と、ここでも時間に働いてもらって、完成です。
新鮮な野菜は若々しくて、魅力がありますが、時間をかけると味わいを増す食材もいいですよね。
人間も同じでありたい、と思ったりしています。
(神尾あんず)
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