うね乃の「煮干」

わが家の文化

 「結婚したら、びっくり!」という新婚さんの話を懐かしい気持ちで聞きました。彼女は、家族のように付きあっていた隣家の幼なじみと結婚。勝手知ったる家族と同居したら、あれもこれも違っていたのだとか。「お豆腐の切り方が」と言うのには笑いました。些細なことの積み重ねが家庭の文化。一種のカルチャーショックですよね。気持ち、分かります。私が同じ思いをしたのは40年も昔のことですが......。

実家と婚家、ここが違う

 「あなたたちの分も取り寄せたのよ」と、結婚間もない私に、義母が手渡してくれたのは、煮干の大袋。息子の食生活を気遣ってのことでしょう。しかし、私は途方に暮れました。扱い方が分かりません。
 というのも実家の出汁は、かつお節と昆布のみ。「生粋の江戸っ子はこれだ!」と父が決めつけ、母も従っていたのでしょう。それに慣れ親しんでいた私は、煮干を持て余して、結局、鮮度が落ちきったところで処分したのでした。お義母さん、ごめんなさい。
 しかし、今、わが家にはしっかりと煮干がストックされています。うね乃の煮干を、幼い子が大好きでポリポリ食べるという子育てママの話を聞き、「身体にも良さそう」と試して以来、常備するようになりました。
 お気に入りポイントは、上品な味に仕上がること。逆だと思っていたので、最初は驚きました。しかも頭やはらわたを取り除かなくても、です。銀色の小イワシの質や鮮度の賜物でしょう。最後まで取り出さず、味噌汁や煮物といっしょに食べると、カルシウムが摂れることも高ポイント。水に一晩浸けておくだけという、簡単な出汁の取り方を知ってからは、さらに出番が増えました。
 最近は料理にも使います。野菜きんぴらに加えたり、煮干し入りの甘酢を作るなど、かなり重宝です。

最強の出汁軍団

 今、うちの食品庫には、煮干し、昆布、花かつお、かつお節、それに出汁パック「じん」まで揃っています。臨機応変に使い分けられる最強の出汁軍団は、夫婦それぞれの実家の生活、時代の変化や情報に影響されて形になった食スタイルの表れ。こだわりはなく、おいしいものはどんどん取り入れるのがわが家の文化です。

(神尾あんず)

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