若い頃の出来事を「もう味わえない贅沢ね」と懐かしむことはありませんか。トマトの冷製スープ「ガスパチョ」をつくると思い出すのは、スペイン貧乏旅行のこと。勤めていた会社を退職し、時間だけはたっぷりあるひとり旅でした。「次はどこへ行こう」と気ままに考えた日々は、今では眩しいぐらい。ガスパチョ体験はその一コマです。
「セニョリータ!」
ロンダという町を歩いていると、突然、何人もの声が聞こえてきました。見れば、レストランで食事中の家族が手を振っています。みんな顔見知り。といっても、前日、長距離列車で隣り合わせ、日本の少女(に見えたらしい)になついた子どもたちに、折り紙を教えただけの......。それなのに再会を大喜びして、食事の席に私を誘ってくれるではありませんか。おずおずと仲間入りした私のために、選んでくれた料理の一 つがガスパチョでした。
「エスタ・ブエノ!!」
覚えたてのスペイン語で「とってもおいしい」と伝えると、みんなとても自慢げでした。ああ、懐かしい。
さて、帰国後、何回かガスパチョをつくってみたのですが、おいしくできませんでした。40年前は料理書も見つからず、レシピも我流でしたが、今にして思うと、原因はトマトだったのでしょう。あの頃は、日本のトマトもトマトジュースも青臭いものが多かったので。
私がガスパチョづくりを再開したのは、健菜トマトジュースがきっかけです。「これを使えばいいかも」と......。実際、期待どおりでした。 つくっているのはトマトジュース・健菜トマト・玉ねぎ・きゅうり・オリーブ油をミキサーにかけるだけの簡単なもの。残ったパンやパプリカを加えるなど、気ままにアレンジしています。スペインのガスパチョは記憶の中で輝いているけれど、こちらも本場に負けないぐらいおいしいのではないかしら。
さて、健菜トマトジュースはわが家の冷蔵庫に欠かせません。夏の朝を、冷たいトマトジュースの一口から始めるのは心地よいものです。食欲がない朝には「飲むサラダ」と呼ばれるガスパチョがおすすめ。元気が身体に満ちてくる気がします。
(神尾あんず)
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