「あなたって、梅仕事をする人だったの!」
時折、誘い合わせて食事をする知人に、「お土産です」と自家製梅干しの小壺を渡すと、反応は期待どおりでした。
「えへへ、じつはそうなんです」
そう言った私は、かなり自慢気だったことでしょう。
小さなギャラリーを持ち、世界を飛び回っている彼女は、会う度に小さくてチャーミングなプレゼントをくれます。何かの折に私からも、と思っていたのですが、「これだわ!」と閃いたのが、梅干しでした。これなら彼女の心遣いのお返しにぴったり。それに、私が彼女を「仕事で大活躍していて素敵」と思っているように、彼女は私を「暮らしを楽しんでいて、いいわね」と感じるのではないかしら、と。
案の定、彼女は「私もいつかは梅仕事をするようになりたいのよね」ですって。
仕事であっぷあっぷしていた十数年前の私も同じでした。それが、健菜の梅干しセットの販売を知り、「私にもできるかも」と、憧れていた梅仕事を始めました。
じつは、記念すべき第一作は大失敗。徹夜で塩漬けをしたものの、レシピを守らず、減塩!と勝手に塩を減らし、道具の除菌をおろそかにした結果、カビが発生。量も多すぎました。翌年は、量を減らしてレシピを忠実に守ったので大成功。それ以来、失敗はありません。塩分の調整も重ねて、わが家の味になっています。
私の梅干しの味は、素朴です。凝った調味液を使うプロのものとは違いますが、でも、おいしさでは負けてないと自画自賛中。大粒の南高梅とミネラル豊富なフランス産の塩という素材の力でしょう。豊富なストックがあるので、梅だれ、梅肉ポテサラ、野菜の梅肉和えなど、思いつくままに梅干しを活用中。さっぱり風味は、これからの季節にぴったりです。
さて、そろそろ梅仕事の時期。私は手作りセットの箱から南高梅を取り出すと、まず、その甘酸っぱい香りを堪能しています。梅は最初に水に漬けなくてはいけないのですが、それが惜しいほど、香りが素敵だからです。
さて、いつになったら、件の知人はこの香りを楽しめるようになるかしら。梅仕事の仲間になる日は遠くないように思えます。
(神尾あんず)
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