友人と映画を観た後、「さて、軽く一杯」とお店を探し始めたところ、ひとりがスマホで会話を始めました。声が驚くほど弾んでいたので、思わず「どうした?」とみんなが耳をそばだてることに...。
「わかった! すぐに帰るわ。アヒージョを作るから、例のワインを開けちゃおうか」
あ〜、分かりました。地方勤務の息子が、急に帰宅したのでしょう。そりゃあ、友達よりイケメンの息子と飲みたいわよね。ウキウキと帰宅する彼女を見送るしかありません。
私のアヒージョ初体験は30年ぐらい前、バルセロナの小さなバルでのことでした。隣りの人のつまみを指さして、「あれを」と注文したアヒージョは、ニンニクの香りを放つ熱々のオイルの中に、マッシュルームが埋もれていて、なんとも美味。敬遠していたオリーブ油を見直したのはこの時です。
すぐに真似したかったけれど、当時の日本は、品質の良いものが少なくて、アヒージョが食卓に登場したのはずいぶん後のことでした。
色々なオイルが手に入るようになった今、私は、オリーブ油大好き人間です。オリーブの果汁を搾っただけの「エクストラ・バージン」クラスは、ワインと同じように産地や農園によって、風味が大きく違います。それだけに、いくつかお気に入りがありますが、健菜の「CARM」はその筆頭。味にクセがなく香りはフルーティ。奥深いところから、辛みのパンチが効いてくる、面白いオイルだと思います。
こんなオイルさえあれば、サラダやパスタは必ずといってよいほどおいしくできるものです。スープの仕上げにたらせばコクが増し、野菜や肉、魚介にオリーブ油を回しかけてオーブンで焼けば、おもてなし料理ができてしまいます。
「CARM」を作っているのはオーガニックな農園としてヨーロッパで知られ、国際コンクールでいくつもの賞を受けているだとか。それだけの価値を感じます。
ところで、原稿のおかげで、アヒージョが無性に食べたくなってきました。今晩は「CARM」を惜しげなく使いましょう。イケメンの息子は居ませんが、ワインも開けようかしら。
(神尾あんず)
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