昨年の夏、健菜トマトジュースのケースを車に積んで、軽井沢に遊びに行きました。滞在先は大学の恩師の別荘です。退官後10年以上経つのですが、夏になると、教え子たちが誘い合い、泊まりがけで別荘に集まります。
久しぶりに参加したわたしは、健菜トマトジュースをお土産にしたのです。
昔はその別荘に1〜2週間、滞在する大学生や大学院生が珍しくありませんでした。かく言うわたしもそのひとり。数人で遊びに行き、軽井沢の夏を謳歌していました。書斎に先生を残して、みなでテニスをしたり、万平ホテルの犬を冷やかしに出かけたり...。議論白熱の夜も、歌いまくりの夜もありました。
ただし、別荘滞在者には義務が二つありました。一つは掃除。ご家族は週末にやってくるだけで、草取りと毎日の掃除は学生に一任されていました。
二つめは先生に朝ごはんを作ること。
夕飯は外食をしたり、近所の別荘に招待されたりといろいろでしたが、先生の朝食は、居候である学生たちの仕事。
でもわたしは、「塩が足りません」「焼き過ぎですね」とダメ出しされることが多かったような...。自炊をしている男子学生のほうがマシだったかもしれません。
昨年、別荘に行く仲間たちとは、朝昼晩とおいしい料理を作ろうと相談。朝食担当のわたしは学生時代のリベンジです。
そして朝。
「トマトジュース......ですか」
赤いグラスを見た先生は、ちょっと引き気味でした。健康志向ゼロの哲学者ですから、予期した通りトマトジュースを飲む習慣はありません。けれど、一口飲むと「おや、なかなかいいですね」と、これも想定内の反応です。
翌日の朝食では、「オレンジジュースにしましょうか」と訊いてみました。すると「いえトマトジュースがいいですね」とのリクエスト。気に入っていただけたようで、よかった。
それにしても別荘の朝食は、とびきり贅沢です。目の前には緑の森。空気はひんやり冷たくて葉っぱの匂い。別荘にテレビはなくて、バッハを大音量で聴きつつ、時間が流れることを楽しみながら食べるのですから...。
ベーコンエッグもコーヒーもおいしいけれど、そこにトマトジュースが加わると一段と豊かに...。健菜トマトジュースには野菜らしい旨みがあり、体が癒されるように感じるのです。
今年も、「いつ軽井沢に遊びに行こうか」という連絡が行き交っています。わたしは、また健菜トマトジュースを持参するつもりでいます。
これ、先生のためというより、朝食を楽しみたい自分のためかもしれません。
(神尾あんず)
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