塩麹&雪麗の酒粕

「やってみよう!」のおもしろさ

 世界無形文化遺産に登録され、和食の話題がテレビでよく取り上げられています。その中で印象に残ったのが「和食 千年のミステリー」というNHKの番組。ミステリーの主役は「麹」でした。
 麹はカビの一種です。学名はアスペルギルス・オリゼ(日本麹カビ)。日本人は、千年前(!)に空中に漂うカビの中から、麹カビを抽出する方法を編み出したのだとか。麹は日本にしかありません。
 それが、日本酒はもちろん、醤油、味噌、みりんなどの独特の「旨み」をもつ調味料を生みました。
 つまり、麹が働いてくれるから、和食の独特の味が生まれたということ。麹は奧が深く、そしてたいへんな働き者。可愛くさえ思えます。
 そんな麹の贈り物に活躍してもらおうと、塩麹と酒粕づかいの工夫に拍車がかかっています。どちらも工夫し甲斐がある食材です。

塩麹はお弁当の味方

 塩麹と酒粕は、私にとっては馴染みがなくて、健菜から入手した当初は、活かし方が分かりませんでした。でも、それが「やってみよう!」「こうしたらどうかな」という、料理のおもしろさにつながりました。

 失敗は多々ありますが、最近は加減が分かってきて、出番が増えています。
 塩麹はお弁当の強い味方です。前夜、塩麹に漬けて焼いた肉や魚は、冷めてもふっくらしています。
 香りがきつくないので、野菜の塩麹漬けもお弁当の定番です。食べきれなかった長いも、ごぼう、キャベツなど、どれも好評です。
 ゆで卵の塩麹漬けもなかなか。チーズもいけます。
 先日、招かれたお茶会では、八寸に、ご亭主手作りの塩麹漬けメロンが盛られていて、その翡翠色の美しかったこと。客の間で「これは何?」と話題でした。私はすぐにわかりましたけれど...。麹がしっかり働いて、「!」と思わせる旨みがありました。


酒粕はお袋の味

 酒粕は、麹そのものが働いてくれるわけではありませんが、料理の旨みをぐっと深めてくれる渋い役者です。はじめは、「雪麗をしぼった後の贅沢な酒粕だから、甘酒用に」と思って入手。使い切れるかと不安でしたが、日本酒好きの友人が持ち帰ることもあって、みるみる残り少なくなっていきます。

 わが家のお味噌汁は、ほんの少しだけ加える酒粕が味の決め手です。もし、息子がいたら「お袋の味」はこの風味になっているはず。よいお味噌が手に入らないときも、酒粕を加えれば大丈夫。
その他、「酒粕でやってみた」の成功例を紹介すると、ふんわり卵焼き、クリームシチュー、サバの味噌煮などなど。いずれも旨みがぐんと高まります。量さえ加減できると、酒粕は万能です。
 でも、残念なことに、今、わが家はその酒粕が切れています。粕汁が1年でいちばんおいしい時期なのに...。健菜の新酒ができるのはもうすぐのはず。つまり、新しい酒粕の販売が始まるものもうすぐ。今、それを待っています。
(神尾あんず)


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