「今が収穫の最盛期。毎朝、ひとりで収穫し、並行して手入れをしているので、仕事がなかなか終わらんとですよ」
ゆったりと熊本弁で話す田畑三次郎さん(74歳)の農園を取材チームが訪れたのは、昨年の3月下旬のこと。この年の1月、強烈な寒波に襲われた熊本では、春に出荷予定の野菜類がダメージを受けていた。だから、「田畑さんの農園でも...」と少し心配していたのだが、そのハウスに入るなり、不安は一掃された。寒波の影響は全く見受けられない。
「収穫適期は少し遅れたが、良かもんがとれていますよ」
田畑さんの言葉を裏付けるように、なすの葉はみずみずしく、紫色の実は艶々と美しく輝いている。やがて実を結ぶ花も大きくて、勢いがあった。
玉名市には田畑さんをはじめ、長なす栽培の名人がいる。
この日は、同じ生産者グループの清田等さんと、高木信和さんが農園に集合してくれていた。清田さんは田畑さんから5年遅れで長なすの生産を始めたベテランだ。高木さんは、ふたりの栽培技術をまとめ、科学的な視点や分析を加えながら、それをさらに若い生産者に指導する役割を担っている。
彼らの長なすは、身は締まって弾力がある上、皮が薄くて柔らかい。包丁で切っても断面が酸化せず、茶色になりにくい。そして何より、味が良い。
では、どのように栽培しているのか。ポイントは何だろう。
この質問に、田畑さんは「なかなか、説明し切らんね」と言いつつ、「こうしてみたら良かった。なら、これを続けよう。これはダメだ。止めよう。15年、それを繰り返してきたからね」と言葉を続けた。
「私は毎日、毎日、長なすを食べるけれど、飽きることがない。これはなすが健康だから、ということかな」
そう言うのは清田さんだ。そして、「最も好きな食べ方は焼きなす」ときっぱり断言したのに、「でも炒めても煮てもおいしか」という言葉が加わった。
「口の中でトロッととけるでしょう。筋張ったところがないものね」
一方、田畑さんは「生が好き」と断言。加熱せずに酢味噌で和えたなすが大好物なのだという。エグミがなくて香りが良いなすを味わうには「これに限る」と。
皆様は、どんな食べ方がお好みでしょうか。健康な野菜をたくさん食べていただきたいと思っています。
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