セロリの旬は春と思われている。しかし、健菜には、真冬に旬を迎えるセロリがある。しかも南国沖縄育ち。世間の常識とはちょっとちがう。
冬の沖縄にはセロリ栽培に最適な農園がある。そしてセロリとの相性抜群の生産者がいる。だから健菜セロリの旬は冬。香りが高くてみずみずしいセロリが、海を越えてやってくる。
大城隆雄さん(48歳)は、独特の地の利を生かし、セロリを育てている健菜生産者のひとりだ。取材に訪れたとき、沖縄本島南部、豊見城市の農園では収穫が始まっていた。
まず、畑の土の荒々しさに驚く。まるで動物が土を掘り返して大暴れでもしたように、土塊がごろごろしている。水たまりはぬかるみ、粘土が足下にまつわりつく。そのくせ、乾燥した土は石のように固まっている。農作業は重労働だろう。
「でもこの土がいいわけ。保水性がある。しかも、水はけもいいから、セロリがほどよく水分を吸収できるんです」
大城さんとの会話は、土のことから始まった。
農園は、ジャーガルと呼ばれる沖縄独特の土壌に覆われている。オリーブ色がかった土は弱アルカリ性。セロリがもっとも好むPH値だ。
「セロリはたくましい野菜。ふかふかの土より、このほうが元気に育つ」と大城さん。
そのセロリの姿は美しい。産毛につつまれた葉は光を反射し、茎はすっきりとして、健康そのものだ。
「風も強烈。それがまたいいんです」
取材中も強い風が止むことなく吹き付けてくる。涼風だ。その風が病害虫を防ぎ、無農薬栽培を可能にしてくれていた。
さらに、ポイントとなるのが「塩分」だ。
風は海の塩を含んでいる。それだけでなく、潅水につかう地下水にも微かに海水が混じっている。潮風は、ミネラル分を葉面散布するのに等しい役割をはたしてくれる。独特の地下水も野菜がミネラルを吸収し、おいしさを高めるのを助けていた。
かつて、潮風や海水は野菜栽培の大敵と見なされていたが、最近は、塩トマトや塩キャベツなど、海水由来のミネラルによって野菜のおいしさを高める栽培が始まっている。
「うちの農業はむかしから塩分との付き合いありき、です」
大城さんのセロリは、いわば塩セロリだったのだ。
大城さんは冗談が好きでおおらかだ。けれど、照れ屋なので、自分の農業について話すとなると、謙遜ばかりになってしまう。
たとえば、塩分を含む土地での野菜栽培のむずかしさ...。健菜倶楽部では希少な塩トマトをお届けしているが、それを生らすには高い技術が必要だ。収穫量も極端に限られる。セロリ栽培はどうなのだろうか。
「セロリはだいじょうぶ。強いから」と大城さんは話すだけだ。
「セロリ栽培は、ぼくにすごく合っている。セロリは、何をしたらいいか、はっきり教えてくれるからね」
それはどんなこと?
「水を欲しがっているとか。欲しがっているけれど、今はやらないほうがいいとか」
与える肥料は最小限と決めている。少しでも多いと、エグミが生じて味が悪くなるからだ。
大城さんはセロリを健康に育てる技をもっている。
セロリは、播種から収穫するまで8カ月近くかかる。農園には、翌日、定植する予定だという苗が用意されていた。その苗は小さくて、はかなげだ。しかも定植すると一度は枯れたようになり、再び復活するのだという。
「それがこんなに立派に育つんだから、ありがたいと思う」
そのセロリの葉の上を、てんとう虫が飛んでいく。
てんとう虫が飛んで行く方向には、海がある。地球が丸いことを教えてくれる水平線が見渡せる海だ。島で育ったセロリは、海が育てたセロリなのかもしれない。
大城農園の収穫は5月まで続くが、健菜倶楽部に出荷するのは、味がピークに達する1〜2月に限定している。
一般には香りをおさえた白系品種が出回っているが、健菜は緑色系品種。その芳香は強烈にして繊細だ。歯ごたえは、しゃっきりと軽快、繊維がやわらかく食べやすい。このおいしさをそのまま味わっていただくために、株ごと、会員の皆様にお届けをしている。
サラダはもちろん、スープや炒め物など、さまざまに使っていただける。健菜セロリは葉もおいしい。てんぷらや佃煮でぜひ、残さずご賞味ください。
河内晩柑は、数ある晩生種の中でも最終ランナーだ。 蜜柑だが初夏の味。八代海を望む農園に生産者を訪ね...
テレビをつけたら、タレントさんが何かを食べながら「メチャメチャおいしい」と言っている場面。食べ物...
昨年の3月、有明海に面した干拓地に玉ねぎ生産者を訪ねた。 おいしさの秘訣は「にがり」。でも、それだけ...
長崎の野菜農家には厳しい春になりました。暖冬で雨が多く、計画通りの生産ができなかった上、価格が暴落...