健菜誕生物語・琉球アグー豚

沖縄在来の希少なアグー豚。純血を守って飼育されている。
アグーをご存知ですか?
アグーは、「南国の黒豚に勝る豚肉はない」という永田照喜治さんとともに、九州や沖縄の養豚家を訪ね歩いてきた健菓倶楽部の担当者が出会った最高の豚肉です。しかし、そのお届けの実現には長い時間がかかりました。飼育数が限られる上、環境や飼育条件を満たす牧場が少ないことがその理由です。今回はアグーと、牧場での飼育のようすについて報告します。
約600頭まで増えた幻の豚
アグーは沖縄在来の黒豚です。現在、沖縄県畜産課が確認・登録している純血アグーはわずか600頭。この600頭でさえ、「ここまでようやく増えた」といわれる数字です。1981年には30頭しか確認できなかったのですから、アグーが幻の豚といわれるのも不思議ではありません。
『沖縄県畜産史』によれば、流球王国の使いが、明(中国)から、豚を持ち帰ったのは1385年のこと。それが「島豚」として飼い続けられ、改良されて「アグー」と呼ばれるようになりました。ところが明治時代に、西欧から大型で繁殖力が強いヨークシャーやパークシャーといった豚が入ってきたために、生産効率の劣るアグーの数は激減してしまいました。
でも1980年代から、沖縄県畜産研究所と県立北部農林高校が中心となって、アグー復活の取り組みが始まり、95年にはほぼ純血種に近いアグーの復元に成功。その後徐々に飼育数を増やしてきたのでした。
一度体験すると忘れられないおいしさ
お届け内容:ロース120g×5枚、バラ(ブロック)500g、肩ロース(3ミリスライス)330g
熱心に純血種が復元された理由はアグーを食べてみるとたちまち分かます。とにかく、おいしいのです。例えばしゃぶしゃぶにすると、口の中にいれた途端に脂肪がほろほろと溶け出して、肉を噛めば、旨みたっぷりの肉汁がわき出してきます。
きめの細かい肉質、いい香り、甘さなど、おそらくこれまで口にしてきた豚肉とはまったく異なるはず。中でも最大の特徴は、脂身のとろけるようなおいしさです。真っ白くていい香りがする脂は、脂身が苦手という方でも「アグーならいい」と言うのではないでしょうか。そのためにアグーはヒレやロースよりも、脂身の多い三枚肉のほうが高額で取引されているほどです。
分析によると、アグーに含まれる旨み成分のグルタミン酸やイノシン酸、甘み成分のアラニンなどは一般の豚種の2倍近くあると言われています。また、アグーの脂肪は多くが植物性柚と同じ成分である不飽和脂肪酸なので、融点が低く、常温でもトロトロと溶けだします。しかも、アグーの肉はコレステロール値が、一般の4分の1程度しかないなど、健康食品としても注目されています。
なにからなにまでいいことづくめに見えるアグーですが、飼育者にとっては手強い相手です。ふつう雌豚は、8頭前後出産しますが、アグーは4~5頭。半分しか子供を産みません。そして体重の増加が少なく、大きくなりません。アグーは飼育の効率が悪すぎるのです。 そのために、流球在来のアグーとヨーロッパ原産の豚種(白豚)を交配させた「あぐ-(カタカナではなく平仮名表記)」や「チヤグー」などの豚種が生み出されて、アグーブランド豚の仲間として出荷されています。
大自然の中で育つアグー

向かって右が牧場長の上地哲さん。アグーは成豚でも体重100キロ程度しかない。
「あぐーもチャグーもよい肉だけれど、純血のアグーにはかなわない」こう話すのは上地哲さん。健菜がアグーの飼育を依頼している牧場の場長です。
じつは健菜倶楽部のためにアグーを飼育してくれる牧場を探し当てるのには、時間がかかりました。「飼育している」と聞いて訪ねると、飼われているのは「あぐー(平仮名の)」であったり、飼育環境や条件に問題があるなど、牧場選びは難航しました。
しかし、上地さんがアグーとともに暮らしている牧場を訪ねた時は「他の養豚所で妥協しなくてよかった」と担当者は思ったといいます。
この牧場のすばらしさは、まず、大自然のただ中にあるところ。牧場は沖縄県本島の北部、「山原=やんばる」とよばれる地域の国頭村にあり、奥深い緑の森を抜けるくねくねと曲がりくねった道だけが牧場へと通じています。牧場は天然記念物のヤンバルクイナが顔を出す道の終わりにあり、その向こうは、キラキラ光る太平洋です。 驚いたことに、繁殖用のアグーが牧場に放たれて自由に草をはんでいます。泥に体をこすりつけてころげまわっている豚もいれば、ケンカをしながら走っている豚もいます。

牧場のすぐそこは大海原。絶好の飼育環境だ。

えさは安全な植物性飼料を厳選。
ふつうは豚をまったく豚舎から出さずに、無菌状態で飼育していることが多いのです。生涯、戸外の空気に触れない豚もいることでしょう。 でも、ここの豚は自由でのびやかです。野生の逞しさがありました。
「えさは植物性の飼料を与えています。放牧で草をはむから、飼料を食べる量は少ないのですよ」と上地さん。その飼料は、沖縄の土着菌が混ざり、ほどよく発酵してから与えるのだといいます。
上地さん自身は養豚のベテランですが、このアグー専用の牧場の歴史は古くはありません。人里から遥かに離れた環境のよい場所に農地と牧草を拓いたのは数年前のこと。最初は、借りたり譲り受けた3頭の貴重な純血系のアグーから飼育を始め、それを繁殖をさせて、母豚が30頭あまりにふえました。今は、この母豚から子豚たちが誕生しています。
飼育期間は通常の2倍、1頭からとれる肉は半分

安全な牧草地で自由に草を食べるアグー。
お届けするアグーの飼育期間は10ケ月~12ケ月。1頭からとれる枝肉は40~45キロしかありません。一般の養豚では飼育期間は半年で110~120キロの肉を出荷するのに比べると、たしかに、効率が悪い豚種です。しかし、品質はすばらしいものがあります。
しかも、上地さんのもとから出荷されてくるアグーは、他のアグーより食べ頃になるまでに時間がかかってるだけに、味はさらに濃厚です。
販売できる肉の量は限られていますが、ぜひ、多くの方にこのおいしさを味わっていただきたいと思っています。
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