健菜玉緑茶

仕事終わりの「ぽっちお茶」

 ひとりでとる食事を「ぽっち飯」というのだとか。ひとりぽっちの「ぽっち」を付け、「ぽっち焼き肉」「ぽっち呑み」等、勝手な造語もあるようですが、私の場合は「ぽっちお茶」。オフィスへ出勤せず、リモートワーク中心の日々に習慣化した私流の「新しい生活様式」かもしれません。

自分へのおもてなし

 午後4時、私は書斎のパソコンを閉じてキッチンへ移動します。朝から始めたリモートワークは、これにて終了と決めました。それからが私のぽっちお茶の時間です。
 茶葉は健菜玉緑茶。これまで後生大事にしまい込んでいた茶器や塗りのお盆を使い、母譲りの鉄瓶でお湯を沸かすなど、大切な客人をもてなすかのごとくお茶を淹れています。もちろん、淹れ方もこの上なく丁寧ですよ。
「今日のお茶請けはこれ!」と、お取り寄せの羊羹を切る日もあれば、老舗のあられを可愛い器に盛りつける日もあり。ぽっちお茶の時間はテレビも音楽もオフ、新聞も広げません。静かに楽しむお茶は自分へのおもてなしかな。
 嬉野伝統の釜入り製法でつくられる健菜玉緑茶の茶葉は、くるくると曲がっていて色も自然。白い器に注ぐと黄金色が際立ち、口に含むとふわりと香りがして、豊かな気持ちになりますね。特に今は新茶の時期。香りがいっそう華やかです。
 こんな風にぽっちお茶に気を配るようになったのは、海外でひとり暮らしをしている友人の影響かもしれません。彼女は何気ない日常の写真をよくSNSにアップするのですが、食事も晩酌の肴も手早く、でも手抜きせずに料理して、美しく盛り付けています。ティータイムには、貴重なアンティークの茶器を惜しげなく使っている様子。写真からは、背筋をぴんと伸ばした彼女が「暮らしを楽しんでいるわ」と伝わってきます。かっこいいな......。
 私のぽっちお茶は、それを少し真似ました。

暮らしのアクセント

 仕事終わりのぽっちお茶は、暮らしのアクセント。静かにお茶の時間を堪能したら、私は気持ちを切り替えて、家事に取りかかります。「ぽっち」も悪くありません。でも、本音は、友だちと賑やかにお茶ができる日が待ち遠しくてなりません。
(神尾あんず)



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